The Bloody Rose

今邑彩『ブラッディ・ローズ』*1読了。
秀逸な和洋折衷サスペンスであり。ロマンティック・ミステリは違うような。

美しい薔薇園に包まれた邸に相沢花梨は嫁いだ。二番目の妻良江が謎の墜死をとげた直後。邸には主の苑田俊春のほか、足の悪い妹、家政婦、お手伝い、園丁が住む。最初の妻雪子への思慕が邸内に満ちる状況下で、早々と三番目の妻花梨に向けられる何者かの憎悪!あなたは雪子になれない、良江の二の舞、と告げる脅迫状が次々届けられる。華麗にして残酷なロマンティック・ミステリ。

って言う話なのです。
文章から流れ出る空気が非常に良いです。薔薇に囲まれた洋館を描いているのに、じめじめとしていて、どことなく日本的なものを感じさせます。舞台や小道具は全部洋風なのにですよ(一部、竹や和室が出てきますけど)。小泉八雲の中にあった武士の妻の話のような雰囲気か。亡くなった妻がひたひたと寄ってくるところね。
雪子の描き方・使い方が上手いのです。非常に効果的に使われています。これ以上言うとネタバレになるので帰ります。
あ、そうそう。解説が城平京でした。どことなく哀愁を感じます。それじゃまた。

*1:創元推理文庫 ISBN:4488424023